もしも世界が終わるなら
あの子は、男の子のような身なりをしていた私とは正反対だった。
互いに華奢ではあったのだが、同じなのはそれだけ。日に焼けても透けるように白く儚げで、まるであの子の方が女の子のようだった。
「しいちゃん?」
当時の呼び名で呼ぶと「ついてきて」と、彼は向きを変え歩き出す。
想像していた再会とのあまりの違いに戸惑いつつ、青年の後に続く。
歩きながら、どこかに電話をする後ろ姿を見つめていると「ちいちゃんに会ったから」とだけ告げ、通話を切った。
やはり彼はあの子なのだ。『ちいちゃん』『しいちゃん』が、当時の私たちの呼び方だった。
背中と後頭部しか見えない彼から、どうにか『しいちゃん』を探す。
あの頃みたいに中性的ではないけれど、平均的な男性よりも小柄かもしれない。歳月で変わった容姿に驚くものの、自分だってかなり変わっているのだからお互い様だと、心の中でため息をつく。