もしも世界が終わるなら
彼の横顔を盗み見る。あの頃と劇的に変わってしまった風貌は、確かに男性だ。
離れ離れになった中学二年生。その頃は、大人へと変貌を遂げる始まりの頃だったように思う。
ほとんど同じだった背も、少ししいちゃんの方が高くなった。頼りない体つきは伸びていく背に追いつけず、一時期はますます細く見えた。
大人になりきれない不安定な彼は、余計に儚げだった。
あのままずっと一緒にいたら、どうなっていたのだろう。
今は今だけは、あの頃の思い出に浸っていたい。
頬を撫でる風は優しく、言葉を交わさなくとも隣に座るしいちゃんは穏やかで。都会の喧騒の中では味わえない、のんびりとした時間を噛み締める。
しばらく懐かしい風景を眺めたあと、おもむろに腰を上げる。
「そろそろ旅館に行かないと」
名残惜しい気持ちになりながらも、別れを告げる。
「そっか。うん。そうだね」