もしも世界が終わるなら
泉質の良さが自慢の名湯は愛好家の方に支持され、田舎ながらも旅館を続けられている。
もちろんここの部屋のように内風呂を露天風呂に改装したりして、集客に尽力もしているようだ。最近では、初夏にあるほたる火祭りを目当てに訪れる観光客もいると聞く。
この地が嫌いなわけじゃない。自分の中で故郷と言えば、ここを思い出すくらい愛着のあった場所だ。
ただ少し思い出が絡まって、解けないしこりになっているだけ。できればここに暮らす人々が、幸せであってほしいと願っている。
しっとりと肌に馴染む湯を堪能し、火照る体を覚ましてから浴衣に袖を通す。