もしも世界が終わるなら
スマホをスクロールして、母の連絡先で指を止める。
何度、母に真相を確認しようと思っただろう。女手一つ、懸命に育ててくれた姿を見てきて、問い質す真似はできなかった。
母からいつか話してくれる。待ち続けて二十八歳になってしまった。
自分の出生にハッキリと疑問を持ったのは、就職の際、職場に提出する戸籍謄本を確認したとき。
今は個人情報の取り扱いが厳しいため、相談の上ほかの書類の代替えも可能な点や、目的以外の使用はしない点などが事細かに記載されていた。
なんの疑問も持たなかった。母子家庭なのは戸籍でわかるのか把握していなかったが、面接時に母子家庭だと伝えてあるから、問題はない。
四角四面に整えられた書類。目を通して愕然とした。
長年、父だと思い続けていた『宗一郎』の名はどこにもなかった。
例え婚活を始めるのだとしても、自分の出生も知らない地に足のついていない自分では、なににも向き合えない気がしていた。