もしも世界が終わるなら
過去の記憶

 次の日、約束の時間の少し前に待ち合わせの場所まで歩く。小学校の裏にある土手。ここが、しいちゃんと休日によく遊んでいた場所だ。

 土手で草滑りをしたり、小川で水浴びをしたりした。それからただ土手に腰を下ろし、取り留めのない話をするときもあった。

 懐かしさに誘われるように土手に座る。男の子の格好ばかりしていたのが嘘のように、ここの地から離れてからはスカートばかり履くようになった。

 男の子の格好ばかりしていたのは、自分の意思だったのだろうか。今もキラキラとまぶしい記憶。それらは作られた平穏だったのではないか。

「早いね」

 目まぐるしく頭の中を駆けていた考えを止め、顔を上げると、しいちゃんはまだぎこちない距離を空け、私の隣へと座る。

「もう帰るの?」

 私の荷物に視線を流し、寂しそうにつぶやく。

「うん。もともと一泊の予定だったから」

「そっか」

 移動を含めての一泊二日。敢えて短くしたのは、長いと逃げてしまいそうだったから。私はここに来るのが怖かった。美しい思い出を全て失ってしまいそうで。

 それでも、会えるかどうかわからなかったしいちゃんに会えた。これは神様の思し召しなのだと思う。
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