もしも世界が終わるなら

 できることならしいちゃんと、たくさんの思い出の場所を巡りたかった。

 今の季節なら、どんぐりがたくさん拾える神社もいい。柿がたわわに実る枝を、いつ鳥が食べに来るのか日が暮れるまで見ているのも楽しかった。

 たわいもない遊びもなにもかもに、私の思い出全てに、しいちゃんがいた。

 しいちゃんは自分の足を囲うように回した腕に顎を乗せ、感慨深そうに言う。

「こんな小さな土手で、よく草滑り出来たなぁ。段ボールを持ち寄って、擦り切れるまで滑ったよね」

 私も視線を土手に向ける。刈られて切り揃えられた背の短い草は、秋の風に吹かれ緑色の艶をなくし茶色く萎び始めている。

 子どもの頃は急斜面の土手のイメージだったが、今見るとなだらかな坂。それでも子どもにしたら、格好の遊び場だった。

 土手から離れた先に小川があり、思い切り草滑りをしても小川にダイブすることはなく思う存分、滑り続けた。
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