もしも世界が終わるなら
まぶしい思い出の中で、忘れてはいない、そしてハッキリさせなければならない事柄があるのは、自分でもよくわかっていた。
今だって心の引っ掛かりが、キラキラまぶしい思い出に浸る邪魔をする。
「あの、さ。あの頃の担任の先生、覚えてる?」
あからさまに、しいちゃんの纏う空気が固くなったのがわかる。私も緊張を悟られないように、平静を装う。
「担任って、何年生の?」
「中学二年生のときの」
「ああ、うん」
言葉が途切れ、沈黙が降りる。
仲のいいふたり。そんな私たちに親しげに話しかける先生がいた。
年は四十代半ばくらいの男の先生。中学二年生で担任になり、学校で話しかけられることが多くなった。通学のときにも会うことが増え、学校外でも話しかけられる機会も増えた。
その担任が、突然来なくなった。
何の説明もされないまま先生は学校に顔を見せなくなり、いつの間にか私の引っ越しが決まっていた。