もしも世界が終わるなら
 私としいちゃんは、いつも一緒にいた。けれどあの日だけ、彼は先生と姿を消した。

「最後に先生に会った日ってさ」

 喉がカラカラに渇いて、声が掠れる。それでも続きを口にする。

「私が先生に呼び出されて、私の代わりにしいちゃんが職員室に行ってくれたよね」

「うん」

 あの頃、私たちを見る先生の視線に『気持ち悪いね』と冗談混じりに話していた。

 怖い話をするみたいにキャーキャー騒ぎ、先生は生徒を見つめる変態だって面白おかしくふたりで話して盛り上がった。

 そんな折、私だけ先生から呼び出された。『放課後、手伝って欲しいことがあるから』と言われ、薄気味悪い笑みを向けられた。

 自意識過剰な年頃だったのだと思う。それでも生理的に受け付けないほどに、私たちの間で先生のキャラクターが固定してしまっていた。
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