もしも世界が終わるなら
明かされる真実
『駅まで送らせて』との申し出を丁重に断り、駅のホームのベンチにひとり腰掛ける。
無人駅には私以外に誰もいない。電車が来るのはまだまだ先で、三十分以上は待たなければならない。
それでもよかった。ただひとりぼんやりとベンチに座り、頭を空っぽにさせていたかった。
どのくらい経っただろう。悪路を散々転がされ続け、壊れてしまったキャスターを眺め続ける。
結局、自分の出生については、父を問い質すわけにもいかず、なにもわからないまま。
しいちゃんとの関係は、想像から遠くない繋がりだった。それでも、しいちゃんさえ知らない秘密が私にあるのだという確証を得た。
私の戸籍に、宗一郎の名はどこにもなかったのだから。
しばらくしてスマホがなにかの受信を告げたため、バッグから出して確認する。画面は着信を表示して振動している。相手は母だ。
まさかのタイミングに喉を鳴らし、躊躇して考えあぐねたあと、スマホをタップする。
「はい。どうしたの? お母さん」
不自然にならないようにいつも通りの返答を心がけると、スマホの向こうから穏やかな声。
「白崎旅館に泊まったんだってね。宗一郎さんから連絡があったわ」
離婚しても連絡を取り合っていたのだと、まずそこに驚く。そして、わざわざ旅館に来たのだと母に報告する父の真意も掴めない。