もしも世界が終わるなら

「宗一郎さんが、大人になった千生を見られて嬉しかったって。結婚でもするときは、今でも父として式に参加したい気持ちがあるからって」

 言葉尻は涙に濡れて、揺れているように感じた。

「千生。あなたに話さなきゃいけないことがあるの」

「お母さん……」

 それは、ずっと待ち望んだ私の出生についての話だろう。待ち続けていたはずなのに、いざ聞けるとなると怖気付きそうになる。

「本当は面と向かって話さなきゃいけないのはわかっているんだけど、顔を見ると言えなくなりそうだから、このまま話していいかな」

 誰もいないホーム。風がススキの穂を揺らす音しか聞こえない。私は覚悟を決めて「うん。話してほしい」と伝え、スマホを握る手に力を入れる。
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