もしも世界が終わるなら
「私は宗一郎さんとも進次郎を通して知り合いで、結婚の報告を喜んでくれるとばかり思っていたの」
暗くなっていく声のトーンに胸騒ぎがする。
結婚しようとしていた本当の父が、私の記憶にある限りは母の側にいなかった事実。進次郎という人はどうしてしまったのか。
「まずは宗一郎さんに報告したくて、人のあまり通らない白崎旅館の裏手で三人。進次郎さんから打ち明けると、宗一郎さんが結婚の報告に取り乱したの」
「どう、して……」
「私も驚いたわ。宗一郎さんは、私と進次郎さんが付き合っていたと知っていたし、宗一郎さんも当時お付き合いされている方もいたみたいだった」
穏やかな、父……だと思っていた宗一郎さんが、取り乱している姿を想像できない。なにより親友の結婚なら、心から喜びそうだ。
「自分も絢子さんに想いを寄せている。俺のことも考えてみてくれないかって、突然言われて」
今でも充分綺麗な母。私を見て、『お母さんの若い頃と瓜二つだ』と頬を綻ばせる宗一郎さん。
様々な記憶と情報が交錯して、ぐちゃぐちゃになる。