もしも世界が終わるなら
もしも世界が終わるなら

 電車がホームへと侵入し、扉が開く。
 車内に入ると、吊り広告が目に映る。

『もしも世界が終わるなら』

 この田舎に来るきっかけとなったフレーズを目にして、今回の旅行の目的を思い出す。

『大人になったら会おう』その約束を果たすために、思い出の彼に会いたくてやってきた。

 それが引き金となり、心に引っかかっていた自分の出生まで知ることができた。

 しいちゃんとは、図らずも兄妹ではなかった。けれど、しいちゃんに『私たちは、血が繋がっていなかったよ』と、伝えようとは思わない。教えてしまったら最後、友情もなにもかもを失ってしまうのは、目に見えていた。

 例え世界が終わるとしても、しいちゃんとは一緒にいられない。なにもかもが変わってしまった。ううん。最初から私が信じていたものは幻想だった。私たちが一緒にいては、負のスパイラルから抜け出せないだろう。

 私がしいちゃんのためになにかしてあげたいと思うのは、私のエゴでしかない。側にいればつらい記憶も呼び覚ますだろう。私がしいちゃんから離れる。それが一番なのだから。

 世界が終わるなら、私はそのときをひとりで過ごし、自分を見つめ直そう。

『もしも世界が終わるなら』と、会いたかった人物に会い、思ってもみなかった結末を迎えた。それでも今まで避けてきた真実に向き合えた。これで良かったのだと思う。
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