もしも世界が終わるなら
私にとって夏目さんはできた人であると同時に、変わり者というイメージだ。私の『脅し』にも動じなかった。
『母子家庭で頑張ってきたから、倉持さんはしっかりしているんだね』と余裕の笑みを向けられたときは面食らった。
『親族に殺人犯がいるかもしれない、という部分は聞こえていましたか?』そう問いかけても、『かもしれないと言われてもな。幸い俺は警察官じゃないから、自分の交友関係くらい自分で責任を持つよ』と言われ、どうして警察官を引き合いに出すのか理解に苦しみ、この話は有耶無耶になってしまった。
あの子に会いにいく。それは、私の出生を否が応でも考えさせられる場所に舞い戻るのと同義。だから余計に近寄れなかったのかもしれない。
あのキラキラまぶしい頃に。そのまぶしさに目が眩み、見えなくなっているなにかを見つけるのが今でも怖かった。