今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
プロローグ
「今、なんて言ったの……!?」

ここは政治家や著名人などが多く訪れる格式高い料亭の一室。着物姿の麗しいご婦人が、正座姿でわなないている。

「ですから。何度も申し上げているとおり――」

彼は私の肩を抱き、悪びれもせずにっこりと笑った。

「彼女のお腹には、俺の子どもがいるんです」

一同の懐疑的な眼差しが私の腹部に突き刺さる。

妊娠三カ月になったばかりの私のお腹は、まだたいして膨らんでおらず、本当に子どもがいるのかと疑う気持ちもわからなくはない。

病院で『ご懐妊です』と言われた瞬間、私ですら耳を疑ってしまったくらいだもの。

けれど――そっとお腹の上に手を添える。

ここには確かに、彼との間にできた赤ちゃんが存在しているのだ。

「ですから、この見合いは破談に。俺は彼女と結婚します」

彼は自分の両親の前、さらには、お見合い相手とそのご家族の前であるにもかかわらず、私の頬にキスをして、熱い恋仲であることを見せつけた。
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