今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
ローテーブルの上にお料理が並ぶ。カラフルなお野菜がたくさん載ったショートパスタに、仔牛ロースのソテー、白身魚のポワレ、どれもおいしそうだ。

げんきんなことに食欲が警戒心を上回った。ちょうどお腹が減っていたのだ。

「はい! 目移りしちゃいます!」

彼はグラスを用意して、小型のワインセラーからボトルを一本抜き取った。私の正面に座り、ポンッと音を響かせて開栓する。

しゅわしゅわと泡立つ金色の液体を空のグラスに注ぎ込む。どうやらシャンパンのようだ。

しかし、彼は自分のグラスにはシャンパンを注がなかった。

彼のグラスには、すでにシャンパンの代わりに無色透明の液体――ミネラルウォーターが入っている。

「西園寺先生は飲まないんですか?」

「ん。念のため、ね。大丈夫だとは思うけど」

「すみません、私だけいただいて」

「俺はあんずちゃんを見ているだけで酔えるから大丈夫」

さらりと口説き文句を交えてごまかす彼。

勤務が終わったあとでも、いつでも病院へ飛んでいけるようにしているんだ。

仕事が基準の生活、大変だなと彼を見つめる。このことも記事に入れておこう。

私はいただきますと手を合わせた。
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