今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「どうかこのご馳走を食べ終わるまで、呼び出しが来ませんように」

「どうかあんずちゃんを口説き終わるまで、呼び出しが来ませんように」

私の軽口に彼が悪乗りする。

「俺が呼び出されても、君は食べてていいからね。シャワーでもベッドでも好きに使って」

「そういうわけにはいきませんよ! っていうか、シャワーって……」

「泊まっていくでしょ?」

「なんでそんな当たり前のように言うんですか」

「君は押しに弱そうだからね。粘り負けしてくれるのを待っているんだ。そのうちツッコむのも面倒になって、気づけば俺に抱かれているんじゃないかな」

むぐっと喉を詰まらせて、ごまかすようにシャンパンを飲んだ。

彼は平然とした顔で食事を続けている。

口説くことに抵抗ひとつ感じていないのだろうか。口説かれているこちらは真っ赤になっているというのに。

食事が終わる頃には、火照りを通り越してふわふわしていた。おかしいな、そんなにたくさん飲んだ覚えもないのに。

不思議に思いシャンパンのラベルを見ると、アルコール度数十二パーセント。

しまった、甘くて飲みやすいから酎ハイ感覚でほいほい飲んでいたけれど、ワイン程度の度数はあるんだ。
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