今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「じゃあ聞くけど、仕事中の俺を見てどう思った? 俺のことをずっと見ていたって言ったよね?」

「どうって……」

もちろん、責任感にあふれた立派な医師だと思った。

格好よくて、実力があって、頼もしくて、魅力的な人。

でも、そんなことを言わせるなんて。

「……ずるい」

「どうして?」

ニヤニヤと彼が笑う。誉め言葉のひとつでも口にしたなら、そのまま捕食されることが目に見えている。

「そりゃあ、医師としての西園寺先生は素敵だと思いますけど、それとこれとは別というか」

「仕事だろうがプライベートだろうが両方とも俺なのに、どうして別モノ扱いするんだ?」

それは……と言い淀む。

医師である彼と、みんなに愛想よく振る舞う彼、どちらが本当の彼なのだろう。自分でもよくわからなくなってきた。

「俺のことを『軽い』だなんて罵ったのはどうして? 本気で見てほしくて、いじけていたんじゃないの?」

見透かされてハッとする。

軽いと軽蔑しそうになったのは……嫉妬したから?

彼の思わせぶりな態度に鼓動を高鳴らせながらも、どうせ誰に対してもこうなのだろうと、本気にならないよう自分に言い聞かせていた。

それはどうして?
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