今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「あいにく、人の心を読むのは得意なんだよ」

彼の大きな手が私の後頭部に回り、すっぽりと頭を包み込む。

こっちにおいでと引き寄せられ、額と額がコツンと当たった。

「君はすごく鈍いみたいだから、わかりやすく教えてあげようか」

すごく嫌な予感がする。彼は私になにを知らしめようとしているのか。

「教えるって、なに……?」

恐る恐る問いかけるも、言葉としての回答が来る前に顔の距離が迫り、咄嗟に目を閉じた。

直後、柔らかな感触に支配される。

唇の上で優しく踊るそれの正体を知りながらも、不思議と跳ねのける気になれなくて。

体に力が入らず、抵抗することすら頭から抜け落ちてしまう。

でも、こうして唇を重ね合わせることが、まるで決められた筋書きを辿るかのように自然で。

なされるがまま彼のキスを受け止める。

彼は緩く閉じた私の唇をこじ開け、その内側をくすぐるようにひと舐めした。

まさか奥まで触れられるとは思わず、ぴくりと震え、逃げるように身を引く。
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