今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「実はね。今月号も読んだのよ」

「え!?」

百合根さんが戸棚から出してきたのは、現在出版されている最新号だ。私が書いたパイロットの記事を開いて手渡してくれる。

中には赤字が書き込まれていて、その量に思わず唖然としてしまった。

「今の編集長は、割とこだわりのない人でしょう。とりあえず問題がなければ承認してくれる。下としては楽だけど、向上心を忘れてなぁなぁでやっていると、気がつけばなんのキャリアも積み上がってないなんてことになるわよ」

ごくりと息を呑む。前編集長の百合根さんは、熱血漢のスパルタ気質。気に入らない記事はガンガンNGを出す人だった。

百合根さんの後任の編集長は、間違っていなければOKという人で、仕事としては楽になったけれど、これが成長に繋がるのかと言えば疑問だ。

売れ行きがじわじわと落ちてきているのも気になる。

クオリティダウンというほどではないけれど、この雑誌の熱が失われつつあることに気づいた読者もいるのかもしれない。
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