今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
あのとき眞木先生は「大丈夫だよ」なんて言ってくれたけれど、あとあと看護師さんから聞かされた話だと、全然大丈夫な状況ではなかったらしい。

事故直後は気を失っていたからわからなかったけれど、私の脚は開放骨折、つまり骨が皮膚を突き破り外気に触れている状態だった。

骨は細菌の感染に弱い。開放骨折の場合、すぐに処置をしなければ重篤な感染症を引き起こすリスクが高く、場合によっては脚を切断しなければならない。

時間との勝負――たまたま運ばれた救急病院にスペシャリストである眞木先生がいてくれて幸運だった。

「白雪さん、頑張ってたからね」

「だって、せっかく助かった命ですもん。また自由に歩けるようになって、好きなことをしたいじゃありませんか」

「白雪さんは考え方が前向きなんだろうな。ほら、隣のベッドの子なんて、もう歩けないかもしれないって鬱々としていたじゃない」

「ああ、あの子ですか……」

眞木先生に奥の席を勧めながら、ぼんやりと八年前のことを思い出す。

私が入院中、同室にいた女の子で、歳は確か高校生。部活中に骨折してしまったそうだ。

私よりはずっと軽症だったけれど、リハビリがつらくてめげてしまっていた。

以前のように走れないかもしれないという絶望感もあったのだろう。
< 11 / 275 >

この作品をシェア

pagetop