今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
それにしても重い。いや、最初はすごく軽く感じていたのだが、時間が経つごとに腕が、腰が、肩がつらくなってきた。

そんな菜々ちゃんを一日何時間も抱っこしている百合根さんはさぞ大変だろう。睡眠もあまりとれていないと言うし、家事だってしなきゃならない。

こんな大変な時期に押しかけてきてしまったことを、少し後悔した。

「それにしても、相変わらずわかりやすいわね、白雪は。で? この人とどこまでいったの? アプローチできなくて困ってる感じ? それとも逆にアプローチされて困ってる感じ?」

どうやら私からアプローチしているという選択肢はないらしい。していないか、されたかの二択。まぁ、その推理は合っている。

「……そんな、言うほどなにかがあったわけじゃ……」

「否定はしないのね。じゃあ、軽~く遊ばれたのを白雪が気にしてひとりでうじうじしてるって感じか」

グサッと胸を射抜かれた。まさしくその通りだ。

彼の家で食事をご馳走になって、キスされた。

それ以上のことはされることなく家に帰してもらえたけれど、あれから三週間、もやもやとした日々を送っている。

原稿や写真をチェックしてもらうなど、メールでのやり取りはあるものの、プライベートの話題に発展したことはない。

あの日、彼は本気だったのか、ただの遊びだったのか、聞けないでいる。
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