今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
以前の百合根さんはギラギラとして眩しかったけれど、今の百合根さんはまた違った柔らかい輝きを放っている。すごくしあわせそうだ。

母親という仕事が、とても価値のあるものに思えてくる。

「白雪も出産を考えているなら、仕事ばっかりしていないで、男に目を向けなさいね」

クスクス笑う百合根さん。からかわれて苦笑しつつも、つい考え込んでしまう。

私はいつか母親になりたい……?

「私は……」

子どもは育ててみたいけれど、仕事も失いたくないし、旦那さんに関しては全然想像がつかない。

すべてが漠然としているあたり、結婚は遠い気がする。

すっかり寝入った菜々ちゃんを、百合根さんはベビーベッドに下ろそうとした。

しかし――。

「――っほぎゃあっ、ふぎゃあぁっ!」

背中をマットにつけた瞬間泣き出してしまい、ああと額を押さえる百合根さん。

「この子、下ろすと泣くの。背中に人感センサーついてるみたい」

「ええっ!?」

思わず菜々ちゃんの背中をまじまじと覗き込んでしまうのだった。


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