今夜、妊娠したら結婚します～エリート外科医は懐妊婚を所望する～

雑誌を院長先生に手渡して、私と西園寺先生、眞木先生は院長室を出ようと扉に手をかける。

そのとき、館内アナウンスが流れた。

『全館放送。スタットコールです。院内のスタッフは９９番までご連絡ください』

なんのことを言っているのかわからず、私は聞き流そうとしたけれど。

気がつけば西園寺先生も眞木先生も強張った表情で顔を見合わせていた。

すると突然、西園寺先生が私の背中をパンと叩き「ごめん、あんずちゃん。また今度！」と駆けだした。

その背中を追いかけて、眞木先生も「気をつけて帰ってね！」と走り出す。

いったいなにが起こったのかと呆然としていると。

「スタットコール。緊急事態発生時の応援要請だよ」

院長先生は私の背中を押して、部屋を出るようにと促した。

そのまま私を連れてエレベーターホールまで歩いていく。心なしか院長先生の歩調も速い。

「９９番は隠語――救急部を示す。救急搬送された患者が重篤な状態か、あるいは、複数の患者が同時に救急搬送されてきたか――とにかく、手が足りなくて困っている状態だ。空いている医師や看護師は急行する」

すると、救急車の音が聞こえてきた。それも一台ではない。複数台だ。