今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
大きな手が私の後頭部を捕まえて、逃げ出せないようしっかりと押さえつける。

優しくて甘かった、この前のキスとは違う。激情をぶつけるかのような激しいキスで、私の心を乱暴に奪おうとする。

「っ、センセ――」

彼の腕から逃れようと暴れたら、余計に強くかき抱かれ、身動きすらとれなくなった。

乱暴な抱擁は八つ当たりに近い。それで彼の気が楽になるというのなら、いくらでも身を捧げるけれど。

私がここに来たのは、彼を落ち着かせるため――こうされるためだ。

「……落ち着き、ましたか……?」

激しいキスの合間に息を切らしながら尋ねると、彼はやっと唇を離し、熱の冷めぬ目でこちらを見つめた。

「もしかして君は、俺にめちゃくちゃにされたくて来たの?」

「ち、違いますけど……」

慌ててブンブンと首を横に振る。こうなることを期待していたわけじゃない。……嫌というわけでもないのだけれど。

「……少しでも、西園寺先生の気が楽になるなら……その、キスくらい、は……」

言い訳のように答えると、彼は困った顔をする。

「悪い子だな。俺のご機嫌取りに唇を使うだなんて」

「そういうわけじゃ……」
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