今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
『長門さんのご親戚にね、帝央ホテルでお勤めされている方がいらっしゃるんですって。その伝手で予約させてもらえたそうよ』

「待って。私、あんな人とお見合いなんてしないって何度言えばわかるの!? お母さんがお断りしてくれないなら、私が直接お断りするけど」

『長門さんを逃したら、一生まともな男性と結婚できないわよ! 言っておくけれど年収一千万以下は男と認めません』

「年収一千万って……なに言っているの!?」

収入を指定してくるなんて、呆れてしまう。

とはいえ、母がなぜここまで私の結婚に躍起になっているのか、理由はわかっている。

これといった学歴も就職歴も趣味もなく、ただ結婚して嫁ぐことだけを期待されて生きてきた母。

そんな母にとって、経済学の権威としても有名なお父さんの心を射止め、白雪家に嫁いだことは誇りだったのだろう。

父はしょっちゅう海外出張をしているから、三人の兄妹たちを育てるのは母の仕事だった。

白雪家のよき妻であり母であることが彼女の存在意義。その仕事は今でも続いている。

「……お母さんの気持ちはわかるけど、あの人だけはどうしてもイヤなのよ……」
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