今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
私の肩に手を置いてソファに座らせる。髪をくしゅくしゅと撫でてなだめると、いつもの能天気な笑みを浮かべた。

「俺と付き合ってるってことでしばらくはごまかせるんじゃない? 多少の猶予にはなるだろう」

彼はコートを脱ぎネクタイを緩める。ソファに体を預け、さっそくリラックスモードだ。

こんな状況を作り出した張本人だというのに、完全に他人事。

「……そうかもしれませんけど……先延ばししたところでどうしようも」

「そういえば『マシな人と結婚させて』って言っていたね。そもそも、マシな人が現れたら結婚するつもりだったの?」

思わず「えっ」と声を漏らす。

結婚したいと考えたことはない。長門さんと結婚するくらいなら、別の人としたほうがマシってだけで。

「自ら望んで結婚するわけでは……でも、それで母が満足してくれるって言うなら……」

それもアリかなと思う。もちろん、価値観の合う人が見つかればの話だけれど。

今回のように、結婚する前から浮気する気満々の人は論外だ。

西園寺先生は私を覗き込み、なにを思ったのか、ぼそりとつぶやいた。

「なるほど。これはうかうかしていられないな」
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