今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
考え込むようにじっと虚空を見つめていたが、急になにかを思い立ったようで、こちらに向き直った。

「……? 西園寺せんせ――ぅんっ!」

彼の手が伸びてきて私の両頬を挟んだ。かと思えば、柔らかな唇を押し当ててくる。

彼の手は温かかった。そして、その唇も。屋上にいたときとは比べ物にならないくらい。

思わずうっとりと惚けるように目を閉じた。

二度、三度と唇を重ね合わせていくうちに、体温だけではない、異なった種類の熱を感じとる。

ゆっくりと目を開いてみると、今まで見せたことのない情熱的な表情をしていて、鼓動がばくんと弾けそうになった。

「せんせ……急に、どうしたの?」

「火がついた。のんびりしていたら、杏が他の誰かと結婚してしまいそうだし」

ちゅっと唇の上で音を鳴らして、不敵に微笑む。

「もう、俺から逃れられないように、既成事実を作るしかないかなって」

再びに私の唇に照準を合わせると、荒々しいキスをもたらす。

彼の手が私の腹部に伸び、裾から内側に入り込もうとしていた。

「! ……ちょっと……西園寺先生!」

身の危険を察知して、彼の胸に手を突っ張るが、彼はなんてことない顔で口の端を艶っぽく跳ね上げる。
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