今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「誰かと結婚するくらいなら、俺と結婚して」

「なに言ってるんですか!」

思わず反論するけれど、なす術もなく、ソファの座面に転がされてしまう。

彼は私の上に覆いかぶさり、ネクタイの結び目に人差し指を差し入れ引き抜いた。

「ねぇ。杏。抱きたい」

「は!?」

「抱かれてもかまわないから、ここで待っていてくれたんじゃないの?」

うっと言葉に詰まり、なにも言えなくなってしまう。

その結末をまったく考えなかったというわけではない。

「純粋なフリをするなよ。こんな時間に男の家で待つ意味くらい、さすがにわかってるよね?」

「それは……」

清らかな関係のまま帰りたいのだとしたら、迂闊以外のなにものでもない。

それに、必死になって拒まなければならないほどイヤとも思っていない。

衝動的に体を重ねるなんて。そんな貞節な思いと、このまま素直に抱かれてしまえという刹那的な感情が戦っている。

私が迷っている間にも彼はジャケットを脱ぎ、シャツのボタンを外し、私を抱く準備を着々と進める。

「今日はすごく疲れたな……君の愛を感じながら眠れたら最高なんだけど?」
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