今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
そりゃあ疲れたことだろう、救急搬送の患者の手術でずっと忙しくしていたのだから。

でも、弱ったフリをするのはズルいんじゃない?

「……疲れているなら、ちゃんと眠ったほうがいいんじゃありませんか?」

「強情だな。せっかく俺が抱かれる口実を作ってあげたのに」

狡猾なことを言って、私の首筋に唇を這わせる。ぞくりと肌が粟立って、気づかぬうちに息を止めていた。

やがて触れていた箇所にひりつく痛み。彼が首筋を甘がみしているのだ。

「っ、あ……!」

拒もうとした瞬間、すぐに痛みは消え、今度はその箇所を舌で優しく撫で上げられる。

唇が首筋を這い、鎖骨をくすぐって滑り落ちていった。じゃれるように甘がみと愛撫を繰り返し、痛みと快楽という相反する官能を与えていく。

「う……んっ……!」

思わず喉から漏れた艶っぽい声に、私自身驚いてしまう。

彼が実力行使に出たのだと気づく頃には、すでに呼吸が荒くなっていた。思うがままに煽られてしまっている。

「もうなんとなく答えはわかっているけれど、一応聞くよ」

私が抵抗できないことを見透かして、彼は紳士なフリをする。

「杏。抱かせて」
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