今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
***

そして現在。

お見合いの席をかき乱した帰り道。彼はハンドルを握りながら、助手席に座る私に向けて冷ややかに言い放った。

「冗談じゃない」

『ひとりで子どもを産み育てる許可をください』、つまり私のシングルマザー案は、あっさりと棄却されてしまった。

「産んでほしいと頼んだのはこちらなのに、なぜ拒まれなきゃならないんだ」

「それは……西園寺先生に迷惑をかけたくなくて」

「俺が子どもの父親じゃ不満? 結婚したくない?」

「ち、違います――」

「じゃあどうして――」

そこまで言ったところで、彼は言葉を止めた。

いつの間にか自分がきつい口調になってしまっていることに気づいたのだろう。息をついてペースを整えると、ゆっくりと言葉を再開した。

「どうしてそんな考えに至ったのか、教えてほしい」

私はうつむき、膝の上の手をきゅっと握り締める。

なぜ彼が私を選んだのか、結婚を本当に望んでいるのか、こんな場当たり的な妊娠で、父親として子どもに愛情を注げるのか――不安をぽつぽつと口にすると、彼は深いため息をこぼした。

「……不安にさせて悪かった」

申し訳なさそうに口にしたあと、信号の合間に私の頭をくしゃくしゃとかきまわし、指先で頬を撫でる。
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