今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「ちゃんと愛しているし、結婚したいし、子どもの父親にもなりたいと思っている。プロポーズのタイミングが遅れてすまなかった」

真剣な顔で謝罪され、頷くほかない。

私がまだ納得できていないことはわかっているのだろう、彼は気分を切り替えるように声のトーンを上げた。

「それより食事にしないか? もう昼過ぎだ。ちゃんと赤ちゃんに栄養を届けなければ」

正直食欲はあまりないけれど、彼の言うことはもっともだ。

妊娠が発覚して以降、不安のほうが大きくて、体重が落ちてしまったくらいだ。ちゃんと体調管理をしなければ。

車が向かった先は、彼のマンションからほど近い場所にある一軒家のフレンチレストランだった。ご夫婦で経営するこぢんまりとした店で、フロアには席がひとつだけ。

ウェイターの奥さまとシェフの旦那さまが並んで来店を迎えてくれた。

「無理を言ってすみませんでした」

西園寺先生が小さく会釈する。

「とんでもありません。うちはひと組限定のオーダーメイドレストランですから。季節の食材とお客さまのご要望に沿ってメニューを組み立てていくんですよ」

笑顔で椅子を引いてくれる奥さま、無口そうな旦那さまは一礼だけしてキッチンに入っていく。
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