今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
オーダー済みのようで、すぐに食前酒が運ばれてきた。

「ご懐妊おめでとうございます。本日のアペリティフはノンアルコールスパークリングワインでございます。お祝いとお聞きして、華やかなお色のロゼをご用意いたしました」

奥様がグラスに淡いピンク色のワインを注いでくれる。

「乾杯しよう」とグラスを掲げる彼に、私も「乾杯」と真似をする。

ひと口飲むと、すっきりと、でもしっかりとした果実の甘みが口いっぱいに広がった。飲みやすく甘さは強いけれど、香りも芳醇で上品だ。

緊張の糸がほぐれ、思わず「おいしい」と声が漏れた。やっと西園寺先生が安心したような顔をする。

「きちんとふたりでお祝いする前に見合いの場なんかに連れ出して悪かった。俺は本当に妊娠をうれしく思ってるよ」

妊娠に気づき病院へ行ったのが十日前。彼に報告したのがちょうど一週間前だ。

電話で報告しただけで、今後のことをゆっくり話し合う暇もなく、今日を迎えてしまった。
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