今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「あまりに急なことで疑っているかもしれないが、俺の中ではとっくに結婚の意志が固まっていた。君のこともよくわかっているつもりだしね」

「よくわかってるって……たいして話をしたこともないのに?」

「言っただろう、人の心を読むのは得意だ」

瞳を指さして彼はにこりと笑う。

それにしたって、不自然ではないだろうか。

私と西園寺先生が出会ったのは三カ月前――一見長そうに聞こえるけれど、顔を合わせた回数は数える程度だ。

そんな短期間で、私を理解するなんて無理ではないか。現に私は、彼のことがさっぱりわからないのだから。

「やっぱり……納得できなくて」

「でも、今さら結婚できませんはナシだ。杏のお腹にはもう俺の子がいるんだから。子どものためにも結婚してもらうよ」

私のお腹に目を向けて、勝ち誇った顔をする彼。

「一応『結婚してください』とは言ったけれど、拒否権はないと思ってくれ。なにがなんでも俺のことを愛してもらう」

驚いてあんぐりと口を開ける。横暴な人だ……。

とはいえ、そこまで明確に結婚の意思があるのなら、彼の言う通り、子どものためには結婚をしたほうがいい。

それに、体を重ねたあの日、彼の子どもを産んでもいいと思ったのは紛れもなく私自身なのだ。
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