今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「それから、段取りもすっ飛ばしてしまって申しわけありません。彼女、プロポーズを聞かないと食事をしてくれそうになかったから」

「プロポーズが成功したようでよかったです」

クスクスと笑い合う彼と奥様。私だけがきょとんと目を瞬かせていた。段取りってなんのこと?

その謎は、コース料理の最後で解けることになった。

運ばれてきたのは大きなケーキ。真ん中にあるドーム状のガラスケースを開けてみると、中には生クリームと甘いソースを添えた美しい食用の花々が散りばめられていた。

「本当はこのガラスケースの中に、ダイヤの小箱を置くはずだったんだけどね」

テーブルの脇に置かれている小箱を見つめて彼が苦笑する。

「そ、そうだったんですね……」

私が『シングルマザーになる』と言い出したせいで、彼とご夫婦が計画したプロポーズ大作戦が台無しになってしまったんだ。

「なんだかすみません……」

平謝りする私に、キッチンから出てきた奥さまと旦那さまは「末永くおしあわせに」と笑顔をくれた。


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