今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
食事を終えた私たちは、車で彼のマンションに向かった。

「この先のことを少し話し合っておこう。住まいも決めなければならないし……あ、先に言っておくけれど、別居はナシだ」

彼が同居を望まないのであれば、別居を提案しようか――そう思っていた矢先に先手を打たれ、うっと唸る。

「少しでも早く一緒に暮らしたいと思っている。杏が親御さんのもとにいるならまだしも、ひとり暮らしだからね。妊娠中は誰かがそばにいたほうがいいだろう」

そう言って案内された彼の家には、ふかふかのスリッパが置いてあった。

どう見ても女性用。この前来たときにはなかった気がするのだけれど……?

怪訝に思いながらそのスリッパを履いて彼についていくと、リビングの手前にある部屋に案内された。

ドアを開けると、男性の部屋らしからぬ優しい色柄のラグマットやカーテン、ベッドカバーがかけられ、北欧系の白くて上品な調度品が置かれていた。

「デザイナーの知り合いに頼んで大急ぎで発注した」

「まさか……私の部屋ですか?」

驚いて一歩踏み出す。フローラルないい香りがお部屋に漂っている。ラベンダーのルームフレグランスだろうか。
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