今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
慰謝料は高くても一、二百万ではないかと悠生さんは言う。

百万くらいなら私が――と言おうとしたところで、悠生さんに目で脅される。『余計なことは考えず、俺に任せなさい』と。

「支払う意思があることを伝えておいてください。具体的な要求が来れば、私も弁護士を立てて応じます」

「長門さんは、杏の連絡先を教えてほしいと言っているのだけれど……」

「それは止めたほうがいいでしょう。相手が敵意を持っているうちは危険です。以降は直接私がやり取りします」

結局、悠生さんにすべてを任せることになってしまった。私と母は平謝りだ。

悠生さんは、支払うことであと腐れなく事が済むなら安いものだと笑ってくれた。



その日、私は自宅ではなく、悠生さんのマンションに向かった。

――いや、帰ったというべきか。新婚生活の舞台となる新たな住まいなのだから。

ひとまず私は彼の家に住んでみることにした。

もともと身ひとつで実家を出た私、仕事一筋で生きてきたせいか、たいした荷物もない。

ちゃんとした引っ越しはあとあと済ませるとして、まずは最低限の身の回りのものを持って彼の家に移り住んだ。
< 163 / 275 >

この作品をシェア

pagetop