今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「だいたい、うちの病院はメインが循環器だからね。彼が雑誌に載るって言えば、院長も大喜びだろう。彼自身は露出が好きってタイプではないけれど……まぁ、君が相手ならきっと取材を受けてくれるよ、うん」

「はい?」

私が相手ならって、いったいどういう意味だろう?

頭が疑問符でいっぱいになっている間に、眞木先生は「じゃあ、話は通しておくから」と珍しく強引に話を進めていった。

「……そんなに、写真が嫌でした?」

「こんな写真見られたら、同僚の先生に笑われちゃうよ」

どうやら仁王立ちの決め顔ショットが照れくさいらしい。あははははーとごまかすように笑っている。

いずれにせよ、取材対象がNGって言っているのだから、このまま強行するわけにはいかない。

「……わかりました。もしその心臓外科の先生から取材の許可が下りたら、連絡いただけますか?」

「オーケー! 任せておいて」

気が楽になったのか、妙に軽く答える眞木先生。

結局この日の取材はナシに。食事代は経費で落とす予定だったけれど、眞木先生は取材を断ったことを申し訳なく感じているのか「俺が奢るから!」と言って譲らなかった。

「この分の食事代は、西園寺先生との取材のときに使ってやって」

どうやらその心臓外科の先生は西園寺という名前らしい。

後日、紹介してもらうことを約束して、その日は食事と世間話だけして帰路についた。
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