今夜、妊娠したら結婚します～エリート外科医は懐妊婚を所望する～

待ち合わせ時間まで、まだ十五分ある。私は中庭のベンチに座り、ぼんやりと辺りの景色を見回して、当時の記憶を懐かしんだ。

今日は冷えるせいか、歩いている人は少ない。

私が入院していた初夏から夏にかけては、木々が青々としていて気持ちがよかったのだけれど、この季節は芝生も茶色くくすんだ色をしていて、木々は坊主、なんだか物悲しい。

そんなとき、入院棟のほうから若い女性たちが歩いてきた。

高校生か大学生くらいの集団。服装的に入院患者だろう、中には点滴を引いている子までいる。

こんな場所で女の子たちが群れを成して歩いているのは珍しいのではないだろうか。

入院中に意気投合した仲良しグループだろうか……？　通りすぎる一団を観察していると。

私の前まで来たところで、ふと入院棟のほうを振り向いた女の子が「あ」と声をあげた。

彼女たちは一斉に振り向き「きゃあ！」と黄色い悲鳴をあげる。

思わず彼女たちの指差す方向を見てしまった。なになに？　芸能人か誰かが入院しているの？

しかし、歩いてきたのは白衣を纏ったお医者さま。

すらりと背が高くスマートで、まだ若そうな医師だった。