今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
その顔を見て納得する。ああ、芸能人級のイケメンだ。

目元は涼しげだけれど目力はあって、すっと通った鼻筋と繊細な唇は中性的で麗しい。

襟足長めの黒髪がどこかアンニュイでセクシーな雰囲気を醸し出している。

「君たち、またこんなところに集まって。そんな薄着で歩いていたら風邪引いちゃうだろ」

イケメン医師の甘いお説教が響いた。お叱りすらファンサービスのようで、女の子たちはきゃーっとうれしそうに騒いでいる。

「ほら、病室に帰った帰った」

「え~。先生が見当たらないからみんなで探してたのに~」「先生送ってよ~!」

「仕方ないな、病棟の入口までだよ。俺はこれから外来に行かなきゃならないんだから」

「先生、今日診察じゃないでしょう? なにしに行くの?」

「いろいろ」

「なになに? どんな用事?」

「内緒」

「えー!」「ほんとは暇なんじゃないのー?」

「そんなわけないだろ。まったく……」

とても病人とは思えない賑やかな一団が入院棟へと帰っていく。彼女たちがいなくなった途端、急に中庭が静かになった。

……お医者さんって、モテるのね……。

医師という肩書きのおかげか、あのルックスのなせるわざか。いや、両方かもしれない。
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