今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
第八章 今確かに注がれる愛
母は悠生さんのことをとても気に入ったらしく、こまめに電話連絡をよこすようになった。

『まさか杏があんなに素敵な男性とお付き合いしていたなんて。長門さんと結婚させようとしていたことを考えると、ぞっとするわ』

というのも、長門さんは個人情報の不正授受が発覚し、会社を解雇された。私の一件を皮切りに、余罪がぽろぽろと出てきたらしい。

『ごめんなさい、杏。お母さんの人を見る目がなかったわ』

素直に謝ってくれるのはありがたいけれど、母の調子のよさにはまいってしまう。

私の仕事に関しても、当初は否定的だったのに、悠生さんの説得を受けてあっさりと肯定派に鞍替えした。これからは女性が社会で活躍する時代よ、なんて真逆のことを言って。

他人に影響されやすい人なのだ、母は。自分で検証したり疑ったりすることが苦手で、こうだと言われれば素直に思い込んでしまう。

「いいの。わかってもらえたなら、それで……」

電話口の母をなだめる。こんな勝手な母に振り回されていたと思うと癪ではあるけれど、それでも私を産み、ここまで育ててくれたのは母だ。

「お母さんが安心してくれたなら、よかった」
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