今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「結婚秒読みだったらしいよ?」

「なのに美濃(みの)先生を捨てて別の女に乗り変えたの?」

「しょうがないよ、相手の女、妊娠してるらしいもん」

「浮気相手にはめられた的な? 西園寺先生も運が悪かったね」

予期せず耳に飛び込んできた会話に、ずきんと胸が痛む。

美濃先生というのは、今、悠生さんと話をしている女医のことだろうか。周囲の人たちは、ふたりが結婚すると思っていたようだ。

私は浮気相手に見られているんだ……。

悠生さんはモテるから、結婚となれば注目を浴びるだろうとは思っていたけれど、こんな言われ方をされるだなんて思わなかった。

「っていうか、相手の女、姑息じゃない? わざと妊娠して責任とらせたんでしょ?」

「西園寺先生も、堕ろせなんて言えないだろうしねー」

「やること、えげつなー……」

傘を握り締めて、ぎゅっと唇をかみしめる。

そんなつもりはない。責任をとらせたかったわけじゃ……。

でも、彼が結婚を断らないことに甘えているのは確かだ。

妊娠してほしいって提案してきたのは彼だけれど、軽々しく乗ってしまったのは私。

彼を繋ぎ止めようとしている私は……姑息なの?
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