今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「……あの、杏さん、ありがとうございました」

彼女がガバッと頭を下げたから、私は「えっ」と目を丸くした。

「お見合いの話……私も困っていたの。でも、あなたのお陰で破談にすることができたから」

わけがわからなくて、パチパチと瞬きを繰り返しながら悠生さんに目線で助けを求める。

彼は苦笑しつつ、彼女の言葉を補足してくれた。

「彼女――美濃さんは、幼馴染みたいなものでね。彼女の両親も医者で、うちの傘下の病院で働いているんだ。そんな経緯もあって、お見合いをすることになって」

「そう……だったんですか……」

驚いた。あれだけ嫌がっていたお見合いの相手が幼馴染だったなんて。

でも、逆に疑問が湧き上がる。親しい間柄なら、なぜああまでして縁談を断ろうとしたのか。

「その……ふたり、とてもお似合いに見えるのに……」

おずおずと切り出すと。

「そりゃあ、友情と男女の関係は違うしね」

にこにことして目線を交わすふたり。お互い、恋愛感情はゼロなのだろうか。

「それにね。彼女、恋人がいるんだよ」

悠生さんの言葉に、美濃先生が申し訳なさそうに苦笑した。
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