今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
悠生さんが入院棟に入ると、それを追いかけるかのように長門さんも入口のガラス扉をくぐっていった。

外から中の様子はうかがえない。見失う前にと急いでガラス扉をくぐると、すでに長門さんの姿はどこにも見当たらなかった。

どこに行っちゃったんだろう……?

きょろきょろとあたりを見回して歩いていると、脇の階段をのそのそと上っていく長門さんのうしろ姿が見えて、咄嗟に私は壁の陰に隠れた。

一体どこに向かっているの……?

階段で上れる階数、ということは二階か三階か――そこで、心臓血管外科の病棟が三階にあることを思い出し、ハッと血の気が引く。

もしかしたら、悠生さんも病棟に向かって階段を上っていったのかもしれない。それを追いかけている……?

いずれにせよ、単なる見舞いなどではなさそうだ。

あとを追いかけようと階段を上り、一階と二階の間にある踊り場に到達したところで。

下りてきた男性と正面衝突しそうになって足を止めた。

見上げたところによく知る顔があって、私は身を強張らせる。

長門さんと鉢合わせてしまったのだ。凍りついたかのように手足が動かなくなった。
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