今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「きゃーーーーー!!!!」

私のものではない、甲高い悲鳴が響いた。階段から落ちるのを目撃していた女性が叫んだのだ。

「あの男が、階段から突き落として……!」

女性が階段の上を指差す。それと同時にわらわらと人が集まってきて、私の頭の中も真っ白に染まっていった。

悠生さんは倒れたまま、苦しそうに胸を上下させている。もしかして、胸を強く打ったの? 私を庇ったせいで……?

「悠生さん…………悠生さん!」

震える手で、彼の肩を揺らす。起きて。どうか大丈夫だと言って。

でも彼は目をつぶったまま、うまく息を吸い込めず「かはっ」と乾いた咳をこぼした。苦しそうに歪んだ表情を見て、正常な呼吸ができていないのだと気づく。

「悠生さん! いや! 目を覚まして! 悠生さん!!」

すぐに医師と看護師が駆け寄ってきて、悠生さんの横に膝をついた。

警備員もやってきて、長門さんのあとを追いかけて二階へ走る。

一階にはいまだ叫び声が飛び交っていた。

「西園寺先生! 大丈夫ですか!?」

「男が! 階段から女の子を突き落として、そしたらその人が下敷きに――」

「ストレッチャーを! 早く処置室へ!」

誰もが混乱している中、私は自分を庇って倒れた悠生さんを見つめ、ひたすら自責の念にかられていた。
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