今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「……渡辺さん?」
びくり、と患者さんの肩が震え上がった。恐る恐るこちらを振り向く。
五十代くらいの男性で、ひげが伸びているところを見ると、長いこと入院しているのかもしれない。
「ああー西園寺先生かーびっくりしたなぁー」
患者さんは軽快に笑っていたが――。
「……びっくりしたなぁじゃありませんよね?」
突如、西園寺先生が発した丁寧ながらもドスの利いた声に、私も患者さんも震え上がった。
顔は笑っているのに声が怖くて、頭がパニックを起こしそうだ。
おばあちゃんと話していたときとは大違い。いったいどうしちゃったんだろう。
「渡辺さんは絶対安静じゃありませんでしたか?どうしてこんなところに?」
「いやー……ちょっとお茶が飲みたくなっちゃって」
「だったら看護師に言ってください。そもそも、自由に水分取ってもいいって言われてます?」
西園寺先生が患者さんの代わりに屈んで、自販機の取り口から飲み物を拾う。
「あ、いや……それはっ……」
途端に患者さんがしどろもどろになった。
西園寺先生が手に持っているのは苺ミルク。先生はにっこりと微笑みながらも、目をギロリと患者さんに向けた。
びくり、と患者さんの肩が震え上がった。恐る恐るこちらを振り向く。
五十代くらいの男性で、ひげが伸びているところを見ると、長いこと入院しているのかもしれない。
「ああー西園寺先生かーびっくりしたなぁー」
患者さんは軽快に笑っていたが――。
「……びっくりしたなぁじゃありませんよね?」
突如、西園寺先生が発した丁寧ながらもドスの利いた声に、私も患者さんも震え上がった。
顔は笑っているのに声が怖くて、頭がパニックを起こしそうだ。
おばあちゃんと話していたときとは大違い。いったいどうしちゃったんだろう。
「渡辺さんは絶対安静じゃありませんでしたか?どうしてこんなところに?」
「いやー……ちょっとお茶が飲みたくなっちゃって」
「だったら看護師に言ってください。そもそも、自由に水分取ってもいいって言われてます?」
西園寺先生が患者さんの代わりに屈んで、自販機の取り口から飲み物を拾う。
「あ、いや……それはっ……」
途端に患者さんがしどろもどろになった。
西園寺先生が手に持っているのは苺ミルク。先生はにっこりと微笑みながらも、目をギロリと患者さんに向けた。