今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「西園寺先生はまだ対応にあたっている。一応整形の俺も呼ばれたんだけど、骨や筋肉に異常はなくてね。西園寺先生の専門分野のようだからバトンタッチしてきた。彼は急性大動脈解離じゃないかってあたりをつけていたけれど」

物々しい病名を耳にして、びくりと震え上がる。

「急性大動脈解離……?」

眞木先生が心臓のあたりをトントンと指差す。

「心臓に繋がっている重要な血管の異常だ。急いで処置をしないと死に至る」

『死』と聞いてゾッとした。どうやら重篤な病気らしい。あとで詳しく調べようと思い、私は手帳を取り出して病名を書きなぐった。

「西園寺先生は今その対応を……?」

「うん。今、造影CTを撮っているところ。本当に解離を起こしていたら、そのまま緊急手術になるかもしれない」

切迫した状況にごくりと息を呑む。さっきまでにこにこと愛想を振りまいていた西園寺先生は、今はもう患者さんを救うために最前線で戦っているんだ。

……これが医師の仕事……。

この扉の奥に死の迫った患者さんがいるのだと思うと、胸がヒリヒリしてきた。

でも、これこそ私が取材したかった医師の姿ではないかと思う。
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