今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「す、すみません、ふらついてしまって……」

まさか自分でも血や内臓を見て倒れるだなんて思わなくて、我ながら無駄にデリケートだなと呆れてしまった。

「ゴメン、白雪さん、俺の配慮が足りなかった。手術なんて、素人に見せるようなものじゃないのに……すぐに出よう」

眞木先生は私の目の上に手を置いて、これ以上見ないようにと視界を遮る。

部屋の外に連れ出そうと手を引いてくれるけれど。

「大丈夫、です……見届けさせてください」

視界を塞ぐ手をどけると、罪悪感に苛まれる眞木先生の顔が見えた。

「無理しなくていい。手術なんて見なくったって、記事は書けるだろうし」

「でも、見たいんです」

唇を引き結んで、今度は倒れてしまわないように気合いを入れてモニターを見つめる。

生々しい人間の体内。小窓の向こうには、直立し手術台に向かう西園寺先生の姿。

「西園寺先生が、どんな顔で命と向き合っているのか、知りたいんです」

女の子の前で軽口を叩いていた彼が、今この瞬間、どんな顔で患者さんと向き合っているのか。

それを知らなければ、取材なんて――真実を読者に伝えることなんてできない。
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