今夜、妊娠したら結婚します～エリート外科医は懐妊婚を所望する～

「こういうときのために西園寺先生は予定手術に入らず、待機医に徹していたんでしょう」

「そうだろうね。彼ならどんな急患が来ても対応できるから。なんでもこなせるオールラウンダードクター・西園寺悠生。うん、記事の見出しはこれで決まりかな？」

私へ向けてパチンとウインクする。

とはいえ、オールラウンダードクターの意味がわからず戸惑っていると、院長先生が丁寧に解説してくれた。

「医師にはそれぞれ得意分野がある。科はもちろんだけれど、心臓血管外科の中ですら弁形成、動脈瘤といった具合にそれぞれのプロフェッショナルが存在しているんだ。でも、なんでも完璧にこなしてしまうのが西園寺先生の強みだね」

「どんな臓器がきても大丈夫と言っていましたよ。なにより、肝が据わっている。国境なき医師団にいたことが大きいんでしょうね」

「そ、そうだったんですか！？」

国境なき医師団――医療活動や人道支援を行う国際的な民間ＮＧＯ団体である。

医療の行き渡らない場所、つまりは紛争地帯や災害地域なんかに赴き、援助活動を行う。

そんな場所に彼が身を置いていただなんて。

「あそこは人手不足で、なんでもかんでも診なきゃならないから鍛えられたんだろう。うちの病院に帰ってきてからも、彼にはよく緊急をお願いしている。救急の医師たちからすると、頼みの綱というか、最後の砦というか」