今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
院長先生の評価に私はポカンと口を開けた。

彼ったらチャラ医師どころか、とんでもなくすごいお医者さんじゃないか。

小窓を見つめてぞっと肌を粟立てる。そういうことは早く教えて。

「ところで、院長、こんなところにいていいんですか」

「うん、まずいね。西園寺くんのスピードに周りがついていけていない。西園寺くんが周りに合わせることはできるだろうけれど、手術時間が伸びれば伸びるほどリスクも上がるから」

そう言うと、手に持っていたバッグとコートを眞木先生に手渡した。

「ちょっとヘルプに行ってくるよ。悪いけどこの荷物、院長室に持っていってくれる?」

「わかりました」

院長先生は「それじゃあ、よろしくね」と笑顔で挨拶して、モニター室を飛び出していった。

「……大丈夫なんでしょうか?」

「院長のこと? もちろん。病院一の実力者と言われているし。まぁ、本人は歳だからもうダメだーなんて言って若い子に執刀を譲っているけれど」

「あ、いえ……」

私が心配しているのは西園寺先生のほうだ。助手が頼りにならない今、たったひとりで患者さんの命を支えているのだろう。

そのプレッシャーといったらどれほどのものか……。
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