今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「眞木先生、こんにちは」

「こんにちは。玄関で撮影してるって聞いたから。来ているかなぁと思って探してたんだよ」

なるほど。玄関前での撮影騒ぎが予想以上に広まっているらしい。

「どうもお騒がせしました……」

私が恐縮して謝ると、彼は「俺じゃなくてよかったー」なんて言いながら能天気に笑った。

「ところで、このあと時間ある? できれば、付き合ってほしいことがあるんだけど」

眞木先生のほうからお誘いなんて、いったいどんな用事だろう? 私は目をパチッと瞬かせる。

「実は……今日の心臓血管外科の手術、難易度が高いって話題になっているんだよ。普段は許可をとればだいたいモニター室に入れるんだけど、今日だけは入場制限がかかっているんだ」

「手術って、西園寺先生がする手術ですか?」

「西園寺先生は第一助手らしい。執刀が須皇先生がする」

「へぇ、そうなんですね……」

西園寺先生が『自分は助手向きだ』と言っていたことを思いだし、ふと興味が湧く。

「取材の付き添いって名目なら、科が違う俺でも見学できるかなぁと思って。白雪さんはどう? もう手術なんて血生臭いの、見たくないかな?」
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